選手入場

グラウンドは戦場。選手は試合開始1〜2時間前から、入念なウォーミングアップをして現れます。キックオフの笛とともに、100%の力でぶつかり合えるよう、味方同士でタックルをしあったり自分で自分の頬を殴ったりして自らの闘争本能を目覚めさせます。グラウンドに入場した途端、耳に観衆の大声援が飛び込むと、ボルテージは最高潮に達します。

日本代表歴代最強フォワードと言われた林敏之さん(1960年徳島県出身。同志社大〜神戸製鋼)は、試合前の更衣室で、鉄製のロッカーに自分の頭をガンガンとぶつけるのが癖でした。身長184aと国際レベルのロックとしてはずば抜けて背が低い中で、身長2bに及ぶ海外強豪のロックを向こうに回して活躍した姿は、ラグビーファンにあえて説明はいらないでしょう。あの人間離れしたオーラを目覚めさす儀式が、ロッカーへの「頭ぶつけ」だったんでしょう。林さんはオックスフォード大へ留学し、ケンブリッジ大との対抗戦に出場経験も持ちますが、「頭ぶつけ」を目撃したオックフォードのチームメイトもあまりの気合いに驚いてたじろいだと伝えられています。